楽器屋さんにサックスのマウスピースを見に行くと、たくさんの種類があって、どれをどう選んだら良いかわからなくなってしまいますよね。
非常に種類が多いサックスのマウスピースですが、それぞれのスペックがどんな性質に関係しているかを理解しておくと、マウスピースを選びやすくなります。
マウスピースの5つのスペックと9つの性質マウスピースの選び方を基準に少し詳しく解説すると以下のようになります。
まず前提としてマウスピースは以下の数値的スペックの違いがあります。
- バッフル(ハイバッフル・ローバッフルの構造や角度)
- フェース(開き)
- 筒内の形(丸・カマボコ・四角)
- 素材(ラバー・メタル)
- その他(メーカーの哲学・製造方法・個体差など)
これらの様々な要素がマウスピースの特性として以下の性質に反映されます。
- 音色
- 明るさ・暗さ(派手さ・おとなしさ)
- 豊かさ(太い⇄細い)
- 硬さ(硬い⇄柔らかい)
- 操作性
- 音程ごとのピッチ
- 強弱の幅
- 音のまとまり
- 吹奏感
- 息の入りやすさ
- 反応のよさ
- 音程ごとの吹奏感のバラツキ
スペックと性質の関係
5つのスペックは複数の性質に影響を及ぼすため、一概に関係を示すのは難しいのですが、ざっくり整理すると以下のようになります。
バッフルの性質への影響
バッフルは特にハイバッフルの形状がどうなっているかが、性質に強い影響を与えます。
一般的にはハイバッフルの角度が急なほど、音色は明るく細くなり、操作性は難しくなりますが、反応は良くなります。
フェースの性質への影響
フェース(開き)は、広ければ広いほど、息が入りやすくなると同時に息の量が必要になり、反応は良くなります。
また、フェースが広いと強弱の幅が広くなり反応も良くなりますが、ピッチが取りにくくなります。
筒内の形
筒内の形は丸・カマボコ型・四角の3種類があり、角がないほど息が入りやすくなり、音は明るくなります。
逆におとなしい音色を求めるのであれば、カマボコ型や四角を選ぶと良いでしょう。
素材
マウスピースの素材には、ラバー(樹脂)とメタル(金属)の2種類があります。
こちらはイメージの通りで、ラバーの方が柔らかく、メタルの方が硬い音になります。
メタルのマウスピースは、求められる性質や加工のしやすさから、ハイバッフルの角度が強い、明るい音色をもったマウスピースが多いです。
定番のマウスピース
僕がジャズプレイヤーのため、ジャズの定番マウスピースを挙げます。
クラシックの定番マウスピースは、研究する機会があったら挙げるようにしますね!
以下のいずれのマウスピースも、明るい音色も暗い音色も出しやすく、吹奏感のクセが少ないため、最初に買うマウスピースとしておすすめです。
アルトサックスのジャズの定番マウスピース
アルトサックスのジャズの定番マウスピースと言えば『メイヤー 5MM』です。
少し開きの大きい『メイヤー 6MM』や『メイヤー 6MS』もおすすめですが、基準とするのは『メイヤー 5MM』が良いでしょう。
テナーサックスのジャズの定番マウスピース
テナーサックスのジャズの定番マウスピースと言えば『オットーリンクNY 7』です。
少し開きの大きい『オットーリンクNY 7☆』もおすすめですが、基準は『オットーリンクNY 7』が良いでしょう
マウスピースの選び方
マウスピースを選ぶときは上の9つの性質を理解しながら以下のように選びます。
- 求める音色を基準に、メーカー・種類をだいたい決める
- 同系統の音色が出る種類を複数吹き比べ、操作性を確認する
- だいたい絞り込んだら同じ品番を複数吹き比べ、吹奏感を確認する
3つの選定プロセス、全部が大事なのですが、だいたい最初に買うマウスピースは定番の物を買うと思うので、1と2はそれほど重要では無く、3の『吹奏感』が大事です。
吹奏感が一番奏法に強く影響する
なぜ吹奏感が大事なのかというと、『吹奏感』が悪いと、息が素直に入ってくれなかったり反応が悪かったりして、妙に力んでしまったり、息の入れ方に工夫が必要だったりと、変な癖が付いてしまいやすいからです。
ただ吹奏感は、自分の吹き方や息の入れ方の癖をよくわかっていないと、複数のマウスピースで比較するのが難しい問題があります。
特に、楽器になれていなかったり、吹き方が安定していなかったり、音色のコントロール力が低かったりすると、マウスピースの特性に奏法が引っ張られてしまい、単純比較が出来ないことが多いのです。
比較の話はマウスピースだけではなく楽器本体にも言えることなのですが、特にマウスピースは音の起点のパーツのため振れ幅が大きく難しいのです。
初心者は特にマウスピースをプロに選定してもらった方が良い
ご自身で比較が出来る自身が無いかた以外は、原則的にマウスピースは選定してもらうことをおすすめしています(僕が選定することもできます)。
欲しい音色や操作性を選ぶことは難しいので、ご自身でいろんなマウスピースを吹いて機種の候補を1〜3種類くらいに絞った状態で選定を依頼すると、良いマウスピースを選んでもらいやすいです。
まとめ
マウスピースはサックスの音の起点となる非常に重要なパーツです。
楽器本体は価格が高いので、選ぶときに慎重になりやすいのですが、マウスピースは1万円〜3万円で買えるため、人によっては何本も持っていたり、頻繁に買い換えることもあります。
僕個人的には、音の起点になるマウスピースは、楽器本体以上に大事だと思います。
ご自身の楽器の上達にも直接影響してくるので、ぜひマウスピースは慎重に選んでみてください。